【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。1人でも連絡が取れなければ、預金も不動産も動かせないまま時間だけが過ぎていきます。
ただし打つ手は状況によって違います。住所は分かるのに返事がないのか、住所そのものが分からないのか、生きているかどうかも分からないのかで、使う制度が入れ替わるためです。ここを切り分けずに動くと、必要のない手続きに費用と時間をかけることになります。
戸籍の集め方も2024年3月に大きく変わりました。1か所の窓口で全国の戸籍をまとめて請求できるようになった一方で、この仕組みが使えない相続のかたちも残っています。
ここでは3つの状態ごとに手順を整理し、住所調査で行き詰まったときに使う不在者財産管理人と失踪宣告の違い、そして放置している間に失われるものまで見ていきましょう。相続人の確定そのものについては当事務所の別記事で扱っているため、この記事は連絡が取れない相続人への対処に絞ります。
「連絡が取れない」は3つの状態に分かれる

対処法を決める前に、どの状態なのかを見極めてください。住所判明で無反応、住所不明、生死不明の3つで、進む道はまったく別になります。
1つ目は、住所は分かっているのに返事がない状態です。関係が悪い、相続に関わりたくない、単に放置しているといった理由が考えられます。この場合に不在者財産管理人は使えません。所在が判明している以上、その人は不在者にあたらないためです。進む先は遺産分割調停になります。
2つ目は、住所が分からない状態でしょう。戸籍と戸籍の附票をたどれば現住所に行き着くのが通常ですが、たどり切れない場合には家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる道があります。
3つ目は、生死そのものが分からない状態です。生死不明の期間が7年に達していれば、失踪宣告という制度を使えます。死亡したものとみなされる効果が生じるため、その人を相続人から外して手続きを進められます。
混同されやすいのが1つ目と2つ目です。返事がないだけで不在者財産管理人を申し立てても、不在の事実を証明できず認められません。まずは住所の確認から始めてください。
住所を突き止めるまでの手順

住所調査は、戸籍をたどって本籍を確認し、その戸籍とセットの附票で現住所を取るという流れになります。戸籍には住所が載っていないため、この2段構えが必要です。
出発点は被相続人の戸籍です。出生から死亡までの戸籍を連続してそろえると、誰が相続人にあたるのかが確定します。ここで初めて、連絡すべき相手の本籍が分かります。
次に、その相続人の戸籍の附票を取得してください。附票には住所の移り変わりが記録されているため、最後に届け出た住所が分かる仕組みです。住民票の除票でも同じことを確認できます。
住所が判明したら、まずは手紙を出してください。いきなり法的な手続きに入るより、事情と分割案を書いた書面を送るほうが、結果として早く進む場面が多くあります。返事がないまま数週間が過ぎたら、内容証明郵便に切り替えて記録を残しておきましょう。
なお、相続人の戸籍や附票を第三者が請求するには、自分が相続人であることを示す資料が必要です。司法書士や弁護士は職務上請求という制度で取得できますが、一般の方が他人の戸籍をたどるのは手間がかかります。手続きを自分で進める場合の負担については、こちらの記事も参考になります。
戸籍の集め方は2024年3月に変わった

戸籍法の改正により、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を請求できるようになりました。本籍が全国に散らばっていても、1か所でまとめて取得できます。
法務省の戸籍法の一部を改正する法律についてによれば、令和6年3月1日から、本籍地が遠くにあっても住まいや勤務先の最寄りの窓口で戸籍証明書を請求できるようになりました。相続の場面では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を1か所で集められる意味が大きいといえます。
ただし制限もあります。同じ案内は、請求できるのが本人・配偶者・父母や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属に限られると明示しました。兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外です。子のいない方が亡くなって兄弟姉妹が相続人になるケースでは、従来どおり本籍地ごとに請求することになります。
もう1つ見落とされやすいのが、郵送や代理人による請求ができない点でしょう。窓口へ本人が出向き、顔写真付きの身分証明書を提示する必要があります。司法書士に依頼した場合も、この仕組みは使えません。コンピュータ化されていない一部の戸籍も対象外となっています。
つまり広域交付は万能ではありません。直系をたどる相続では大幅に楽になった一方、兄弟姉妹が相続人になる相続や、専門家に任せる場合には従来の方法が残ると理解しておいてください。
附票をたどっても住所が出ないことがある

戸籍の附票をたどれば必ず現住所に行き着くわけではありません。古い記録はすでに廃棄されている場合があり、そこで調査が止まります。
かつて住民票の除票と戸籍の附票の除票の保存期間は5年でした。青梅市の案内によれば、住民基本台帳法施行令の改正により令和元年6月20日からこの期間が150年に延長されています。
問題は、それ以前に消除された記録です。同じ案内は、平成26年6月19日以前に消除または改製されたものは保存期間の5年をすでに経過しており、発行できない場合があると説明しています。つまり2014年6月より前に住所を移したきり音信不通になっている相続人は、附票でたどれない可能性が残ります。
行き止まりに当たったら、そこで手を止めないでください。判明している最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任を申し立てる段階に進みます。附票で追えなかったという事実そのものが、不在を証明する資料の1つになります。
住所が分からないときは不在者財産管理人を選ぶ
住所をたどり切れない相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらいます。選ばれた管理人が本人に代わって遺産分割協議に加わることで、手続きを前に進められます。
裁判所の案内によれば、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者に財産管理人がいない場合に、家庭裁判所は申立てにより財産管理人選任等の処分を行えるとされました。申立てができるのは利害関係人と検察官で、相続人は利害関係人にあたります。
申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。必要書類として挙げられているのは、不在者の戸籍謄本と戸籍附票、不在の事実を証する資料、財産に関する資料などでした。
注意したいのは予納金です。同じ案内は、不在者の財産の内容によっては予納金が必要な場合があると記しています。管理人への報酬を含む管理費用に不足が見込まれるときに納めるもので、金額は事案によって変わります。申立ての前に管轄の家庭裁判所へ確認しておきましょう。
そして最も重要なのが、管理人が選ばれただけでは遺産分割協議に参加できないという点です。裁判所の案内は、家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割や不動産の売却等を行えると説明しています。選任と許可の2段階になると考えてください。
令和6年司法統計年報(家事編)の第3表によると、不在者の財産の管理に関する処分の新受件数は5,717件でした。決して珍しい手続きではありません。
生死が7年以上分からないときの失踪宣告
生死不明の期間が7年に達しているなら、失踪宣告という選択肢を検討してください。死亡したものとみなす効果が生じるため、その人を相続人から外して手続きを進められます。
裁判所の失踪宣告の案内によれば、生死が7年間明らかでない場合が普通失踪にあたります。戦争や船舶の沈没、震災などの危難に遭遇し、危難が去った後1年間生死が明らかでない場合は危難失踪となり、こちらは1年で足りるとされました。
申立てができるのは、不在者の配偶者や相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など、法律上の利害関係を有する者です。申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円分と郵便切手、そして官報公告料5,298円がかかります。
不在者財産管理人との使い分けは、生死不明の期間で決まります。行方が分からないだけで7年に満たなければ不在者財産管理人、7年を超えて生死も分からなければ失踪宣告という整理です。失踪宣告は公告の期間を経るため、審理に時間がかかる点も見込んでおいてください。
同じ司法統計の第3表では、失踪の宣告及びその取消しの新受件数は2,108件でした。不在者財産管理人の3分の1ほどで、要件が厳しいぶん使われる場面は限られています。
放置している間に失われるもの
連絡が取れないからと手を止めていると、時間の経過そのものが不利に働きます。分割の基準が変わり、登記の義務は進み、相続人はさらに増えていくためです。
まず、相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分による分割を求められなくなります。令和3年の民法改正で新設された民法904条の3の内容で、令和5年4月1日から適用が始まりました。親の介護を担った相続人がいる場合、10年を過ぎるとその貢献が分割に反映されません。
次に、相続登記の申請義務は連絡が取れるかどうかとは無関係に進みます。2024年4月から義務化され、取得を知った日から3年以内に登記しなければ10万円以下の過料の対象になりました。協議がまとまらない場合でも、相続人申告登記であれば1人で申し出て義務を果たせます。
そして最も重い影響が、相続人の増加でしょう。連絡が取れない相続人が亡くなれば、その配偶者や子が新たな相続人として加わります。3人だった相続人が10人を超えることも珍しくなく、そうなれば全員の合意を取り付ける難易度は跳ね上がってしまうでしょう。
相続が重なったときの手続きについては、こちらの記事も参考になります。
連絡が取れない相続人についてよくある質問
連絡が取れない相続人を除いて遺産分割はできますか?
できません。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、1人でも欠けた協議は無効になります。連絡が取れない相続人がいる場合は、住所を調べて連絡を試みるか、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった手続きを経る必要があります。
手紙を出しても返事がない場合はどうすればよいですか?
住所が判明していれば不在者にはあたらないため、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる流れになります。調停の期日には裁判所から呼出状が届くため、当事者同士の連絡では動かなかった相手が応じる場合もあります。
不在者財産管理人には誰が選ばれますか?
申立ての際に候補者を挙げることはできますが、決めるのは家庭裁判所です。不在者と利害が対立しない人物である必要があるため、同じ相続の当事者である相続人が選ばれることは基本的にありません。適任者がいない場合は弁護士や司法書士などの専門職が選ばれます。
予納金はいくらかかりますか?
事案によって変わるため、一律の金額は示されていません。管理する財産の内容と、管理人への報酬を含む管理費用の見込みから裁判所が判断します。申立ての前に管轄の家庭裁判所へ問い合わせておいてください。
兄弟姉妹の戸籍も窓口でまとめて取れますか?
取れません。広域交付で請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍に限られており、兄弟姉妹は対象外です。子のいない方が亡くなって兄弟姉妹が相続人になる場合は、従来どおり本籍地ごとに請求することになります。
海外に住んでいる相続人とはどう進めますか?
在外公館で取得する在留証明とサイン証明を使って、遺産分割協議書に署名してもらう方法が一般的です。日本の印鑑証明書が使えないためで、書類の往復に時間がかかります。連絡が取れているなら不在者にはあたらないため、早めに段取りを組んでください。
連絡が取れない相続人のご相談は国松司法書士法人へ
連絡が取れないという状況は、住所が分かるのか、分からないのか、生死も分からないのかで打つ手が変わります。切り分けさえできれば、次に何をすればよいのかは決まってきます。
国松司法書士法人は、相続と遺言のご相談を27年にわたってお受けしてきました。司法書士・行政書士・土地家屋調査士のトリプルライセンス体制のため、職務上請求による戸籍と附票の収集から、不在者財産管理人の選任申立て、協議成立後の相続登記までを窓口を分けずに進められます。
国分寺市や国立市、府中市、小平市、小金井市といった多摩エリアはもちろん、相続人が全国に散らばっている場合にも対応しています。どこまで調べればよいのか分からない、手紙を出す前に相談したいという段階でも構いません。
初回のご相談は無料です。手元にある戸籍と、連絡が取れなくなった経緯が分かる資料をお持ちいただければ、調査の進め方と必要な手続きをお伝えします。
参考文献
1. 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
2. 青梅市「住民票の除票・戸籍の附票の除票の保存期間」 https://www.city.ome.tokyo.jp/soshiki/13/53839.html
3. 裁判所「不在者財産管理人選任」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
4. 最高裁判所「令和6年司法統計年報(家事編)」 https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12787.pdf
5. 裁判所「失踪宣告」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人【国分寺駅北口4分】
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
この記事のカテゴリー
- 初回のご相談は無料です
- 出張可(成約時は出張料無料)
- ご質問・ご相談お待ちしています。
- 042-300-0255
- いますぐ電話する
- お電話は[月-土]9:00〜18:00までの受付となります。
上記以外の時間帯は大変に申し訳ございませんが「ご相談フォーム」よりご連絡をお願い致します。 - ご相談フォーム
当事務所のサービス
国松司法書士法人では、行政書士・土地家屋調査士事務所を併設し、不動産登記・会社法人登記・許認可・相続・遺言・成年後見・家族信託などのお悩みにワンストップで寄り添います。
-
- 不動産登記
- 司法書士と土地家屋調査士のダブルライセンスを活かし、表示登記から権利登記までワンストップで対応します!建物表題登記、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権抹消登記などをストレスなくスムーズに、ワンストップで実現します!
-
- 建設業許可・各種許認可
- 行政書士のライセンスもあり、建設業(入札参加資格申請含む)、宅建業、旅行業、産業廃棄物処理業等の許認可申請に対応しています。
-
- 相続~27年目の実績は信頼から
- 相続の手続きはとても面倒です!司法書士に依頼することで気持ちが断然軽くなります!戸籍謄本を集めて法定相続情報を取得、遺産分割協議、相続登記、預金解約などがとてもスムーズです。
-
- 贈与
- 相続まで待てない!そんな方には生前贈与がおすすめです。税理士を介して贈与税を最小限にする贈与、例えば「おしどり贈与」や「相続時精算課税制度」などをご提案します。
-
- あなたはどちらの遺言向き?
- お客さまの想いをベストな表現で!生前対策として最も有効なのが遺言書の作成です。法的有効性はもちろんのこと、作っておいて良かった!と言える遺言書本文、付言事項をご提案します。
-
- 家族信託・民事信託
- ご家族の想い、ご本人の想いをしっかりと受け止めるために「クニマツの家族信託」はお客さまに寄り添った丁寧な面談を行い、財産管理、財産承継のお悩みを解決へと導きます。
-
- 成年後見
- 親や親族が認知症になって、後見人が必要と言われてしまった!そんなとき、相談するのに一番頼りになるのが司法書士です。なぜならダントツに後見人に就任していて、経験がとても豊富だからです。
-
- 株式会社登記
- 会社を設立する際には完璧を期したいですよね!司法書士や税理士が入ることで、間違いを防ぐことができます。設立した後のメンテナンスも、定款変更や役員変更などで発生する登記もスムーズです。
-
- 各種法人登記
- 一般社団法人の設立には多くのメリットがあります!株式会社のように営利事業を行いながら、公益的な印象を持たせられるブランド力と信用力、設立費用の安さもアピールポイントの一つです。
また、登記申請については日本全国の不動産、法人の申請をお受けできます。


















