【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
任意後見契約の費用は、契約を結ぶときに2万円前後、実際に効力が生じた後は毎月の報酬が続くという二段構えになっています。単価だけを見比べても、総額の見当はつきません。
公証役場に支払う手数料は1件ごとに決まっているため計算できますが、判断の分かれ目になるのは発効後に毎月かかる任意後見監督人の報酬でしょう。ここを見落とすと、契約時の安さで選んで後から想定外の負担に気づくことになります。
成年後見制度そのものの解説は当事務所の別記事で扱っているため、ここでは任意後見契約の費用に絞って整理します。2025年10月に公証人手数料が改定され、多くの解説が古い金額のまま残っている点にも触れておきましょう。
任意後見契約の費用は契約時と発効後の2段階に分かれる

任意後見契約の費用は、公正証書を作る契約時と、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して効力が生じた後の2段階で発生します。この2つは性質がまったく違うため、分けて考えなければ相場はつかめません。
任意後見契約とは、判断能力があるうちに、自分が選んだ人へ将来の財産管理や手続きを任せる約束をしておく契約です。日本公証人連合会の説明のとおり、任意後見契約に関する法律により公正証書で作成しなければならないことになっています。
見落とされやすいのは、契約を結んだ時点では効力が生じないという点でしょう。家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が発生し、そこから任意後見人としての仕事が始まります。
つまり契約時の費用は一度きりの初期費用で、発効後の費用は本人が亡くなるか契約が終了するまで続く継続費用です。相場を調べるときに両者を混ぜてしまうと、判断を誤ります。
費用の出方は契約の組み方によっても変わります。判断能力が低下してから支援を始める将来型、元気なうちの財産管理の委任と組み合わせる移行型、すでに判断能力が衰え始めた段階で結んですぐ発効させる即効型という3つの形があり、契約の本数と発効の時期がそのまま費用の重さに直結するとお考えください。
契約時にかかる費用の内訳と相場

契約時に公証役場へ支払う実費は、おおむね2万円前後に収まります。日本公証人連合会が示す費用によれば、公証人の基本手数料は1契約につき1万3,000円で、証書が3枚を超えるときは超える1枚ごとに300円が加算されます。
これに法務局への登記嘱託手数料1,600円と、法務局に納める印紙代2,600円が加わるとお考えください。正本や謄本の作成手数料として電磁的記録は1通2,500円、書面は枚数に応じた金額がかかり、書留郵便料も別に必要です。
本人が入院していて公証人に出張してもらう場合は、病床執務加算として基本手数料が1万9,500円になり、さらに日当と交通費を負担しなければなりません。
契約書の文案作成を司法書士や弁護士に依頼する場合は、実費とは別に専門家報酬がかかります。相場としては5万円から15万円程度とされていますが、事務所ごとに料金体系が違うため、見積もりの段階で内訳を確認してください。
公証人手数料は2025年10月に改定された
費用を調べるときに気を付けたいのが、金額の情報の新しさです。日本公証人連合会の案内のとおり、令和7年10月1日から公証人手数料が改正されました。
任意後見契約の基本手数料は11,000円から13,000円へ、登記嘱託手数料は1,400円から1,600円へ引き上げられています。差額そのものは大きくありませんが、複数の契約をまとめて結ぶ場合には積み上がります。
インターネット上の解説記事の多くは、いまだに旧額のまま更新されていません。公的な案内でも更新が追いついていない例があるため、金額は日本公証人連合会の案内で最新のものを確認しましょう。
公正証書を作る流れそのものは遺言と共通する部分が多いため、こちらの記事も参考にしてください。
発効後にかかる費用が総額を左右する

相場の本体は発効後の費用です。任意後見は発効時に別途監督人の報酬がかかり、本人が亡くなるか契約が終了するまで支払いが続きます。
まず必要になるのが、家庭裁判所への任意後見監督人選任の申立てです。裁判所の案内によれば、申立手数料として収入印紙800円分、登記手数料として収入印紙1,400円分、そのほか郵便切手が必要になります。本人の診断書も求められ、こちらは医療機関によって金額が異なります。
任意後見人の報酬は、本人と受任者の話し合いで自由に決められるものです。親族が引き受ける場合は無報酬とする例も多く、専門職が引き受ける場合は月額3万円から5万円程度になることが多いようです。
このほか、後見の事務にかかる交通費や通信費、書類の取得費用などの実費も本人の財産から支出されます。金額としては大きくありませんが、報酬とは別に発生する費用として頭に入れておきましょう。
一方の任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所が事案に応じて決定します。管理する財産の額などによって変わりますが、月額1万円から3万円程度が一つの目安になるでしょう。
ここで総額に引き直してみてください。監督人の報酬が月額2万円だとすれば年24万円で、発効期間が10年に及べば240万円に達します。契約時の2万円前後という数字と比べれば、どちらが相場を決めているのかは明らかです。
なお報酬はいずれも本人の財産から支払われ、監督人が受け取るには家庭裁判所への報酬付与の申立てが必要になります。家族が立て替えて負担する仕組みではありません。
法定後見と比べると費用構造はどう違うのか

任意後見と法定後見の最も大きな費用の違いは、監督にかかるコストが確実に発生するかどうかです。任意後見では監督人の選任が効力発生の条件になっているため、監督人の報酬は必ず生じます。
これに対して法定後見では、最高裁判所事務総局家庭局の統計によれば後見監督人が選任されるのは全体の約3.4%にとどまります。多くの場合は後見人の報酬だけで済むため、監督にかかる費用という点では法定後見のほうが軽くなりやすい構造です。
では任意後見が損なのかというと、そうではありません。自分が信頼する人をあらかじめ後見人に指定できることの対価として、第三者による監督のコストを確実に負担する仕組みだと理解してください。
申立てにかかる実費そのものは、どちらの制度も大きくは変わりません。法定後見の開始の申立ても任意後見監督人選任の申立ても、収入印紙と郵便切手で1万円に届かない範囲に収まるのが通常です。
差が出るとすれば鑑定費用でしょう。法定後見では本人の判断能力を医学的に確かめるための鑑定が必要になる場合があり、その費用が心配されがちですが、実際に鑑定が行われる割合は約3.8%と低い水準にとどまります。どちらの制度も、想定されている費用と実際に発生する費用にはずれがあります。
費用の多寡だけで選ぶ性質のものではありません。誰に財産管理を任せたいのかという希望が明確なら任意後見、すでに判断能力が低下していて選択の余地がないなら法定後見という順序で考えるほうが現実的でしょう。
費用で後悔しないために注意したいこと
費用面で失敗が起きやすいのは、契約時の安さだけで判断してしまう場面と、移行型の契約を結んだまま放置してしまう場面です。どちらも契約の直後には問題が表面化しません。
移行型は、判断能力があるうちの財産管理を委任する契約と、任意後見契約を同時に結ぶ形です。元気なうちから支援を受けられる利点がありますが、契約が2本になるぶん契約時の費用は積み上がります。
さらに注意したいのが、判断能力が低下しても任意後見へ移行しないまま、財産管理の代理人として振る舞い続けるケースです。この状態では家庭裁判所の監督が働かないため、本来なら監督人が選任されるべき時期を逃してしまいます。
将来型は発効するまで費用が発生しない代わりに、受任者と長く連絡を取らないうちに状況が変わってしまうことがあります。受任者が先に亡くなる、あるいは遠方へ転居して引き受けられなくなるという事態も想定しておきましょう。
即効型にも固有の弱点があります。判断能力が衰え始めた段階で契約してすぐ発効させる形のため、後になって契約時点の判断能力が争われる余地を残してしまいます。費用を抑えるつもりで急いで結んだ契約が、結果として紛争の火種になっては本末転倒です。
任意後見のデメリットとして語られる点の多くは、こうした費用と時期のずれから生まれています。制度そのものの欠陥というより、どの型を選び、いつ発効させるかという設計の問題だと捉えてください。
契約したのに一度も発効しないまま終わることも珍しくありません。無駄になったと感じるかもしれませんが、判断能力が保たれたまま生涯を終えられたということでもあります。保険と同じ性質の費用だと考えると納得しやすいのではないでしょうか。
任意後見契約の相談先と進め方

契約書そのものは公証役場で作りますが、内容の設計は司法書士などの専門家に相談したほうが確実です。公証人が確認するのは本人の意思と契約の法的な形式であって、その人に合った権限の範囲まで一緒に考えてくれるわけではありません。
役割を整理すると、公証役場は公正証書の作成と本人の意思確認、専門家は契約内容の設計と発効までの見守り、家庭裁判所は発効後の監督という分担になります。3つの窓口が別々の場面で関わるため、最初にどこへ行くべきか迷いやすい制度です。
相談の際は、おおよその財産の内容と、任せたいと考えている相手を整理しておいてください。通帳や不動産の資料がそろっていれば話は早く進みますが、そろっていなくても相談自体は成り立ちます。
国松司法書士法人は司法書士と行政書士、土地家屋調査士のトリプルライセンス体制で、相続と遺言の相談と手続きに27年目、累計20,000件を超える案件を扱ってきました。任意後見契約は遺言や生前贈与と組み合わせて設計する場面が多いため、複数の手続きを一つの窓口で検討できる体制が判断の助けになります。
どのタイミングで専門家に相談すべきか迷っている方は、こちらの記事も参考にしてください。
任意後見契約についてよくある質問
任意後見契約の費用は誰が払いますか?
本人の財産から支払います。任意後見人の報酬は契約で決められた金額が、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所への報酬付与の申立てを経て本人の財産から支払われる仕組みです。家族が別途負担するものではありません。
任意後見契約は結ぶだけで費用が発生し続けますか?
いいえ、契約しただけの段階では継続的な費用は発生しません。効力が生じるのは家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で、月々の報酬が始まるのもそこからです。
任意後見人に親族がなる場合も報酬は必要ですか?
任意後見人の報酬は契約で自由に決められるため、親族が引き受ける場合は無報酬とすることもできます。ただし任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めるものなので、そちらは無報酬にできません。
任意後見監督人の報酬はいくらですか?
家庭裁判所が事案に応じて決定するため、あらかじめ確定した金額は示されていません。管理する財産の額などによって変わりますが、月額1万円から3万円程度が一つの目安になります。
専門家に依頼した場合の総額はいくらになりますか?
契約時は公証役場への実費が2万円前後、文案の作成を依頼する報酬が5万円から15万円程度で、合計20万円前後に収まることが多いようです。発効後は任意後見監督人の報酬が毎月加わるため、総額は発効している期間の長さで決まります。
任意後見契約は途中でやめられますか?
発効前であれば、公証人の認証を受けた書面によっていつでも解除できます。発効後は正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を得て解除する形になるため、手続きの重さが変わる点にご注意ください。
任意後見契約のご相談は国松司法書士法人へ
任意後見契約は、契約時の金額よりも発効後に続く費用のほうが総額を左右します。だからこそ、どの範囲まで任せるのか、いつ発効させるのかという設計が費用の実質を決めていきます。
国松司法書士法人は、相続と遺言のご相談を27年にわたってお受けしてきました。2026年8月25日よりJR国分寺駅北口から徒歩4分の事務所で、任意後見契約の内容の設計から公証役場との調整、発効時の家庭裁判所への申立てまで、続けてご相談いただけます。
国分寺市や国立市、府中市、小平市、小金井市といった多摩エリアはもちろん、遠方にお住まいのご家族が関わる場合にも全国対応で取り組んでいます。誰に任せるか決めきれていない、費用の見当がつかないという段階でも構いません。
初回のご相談は無料です。おおよその財産の内容と、気になっている点をお持ちいただければ、進め方の見通しをお伝えします。
参考文献
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
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- 出張可(成約時は出張料無料)
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国松司法書士法人では、行政書士・土地家屋調査士事務所を併設し、不動産登記・会社法人登記・許認可・相続・遺言・成年後見・家族信託などのお悩みにワンストップで寄り添います。
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