【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
後見申立ての必要書類は十数種類にのぼりますが、集める順番を決めてから動けば、やり直しはほとんど起こりません。書類名を端から並べても、どこで詰まるのかは見えてきません。
つまずきの原因はほぼ決まっています。自分で書けば済む書類と、他人に書いてもらわなければ手に入らない書類が混ざっているのに、同じ扱いで進めてしまうことです。
ここでは判断能力がすでに低下している方について家庭裁判所へ行う法定後見の申立てを前提に、必要書類を仕分けたうえで、入手先と有効期限、そして集める順番を整理します。書式の名称は家庭裁判所によって多少異なるため、申立先の裁判所の案内も併せてご確認ください。
後見申立ての必要書類

後見申立ての必要書類は、自分で作成する書式、役所で取得する証明書、第三者に書いてもらう書類の3つに分かれます。この仕分けが、準備にかかる期間をそのまま決めていきます。
自分で作成する書式は、家庭裁判所の窓口やWebサイトで入手できる申立書や財産目録などです。手間はかかりますが、いつ書くかは自分で決められるため、日程の読める作業になります。
役所で取得する証明書は、戸籍謄本や住民票、登記されていないことの証明書です。窓口へ行けばその場で交付を受けられるものが多く、こちらも見通しは立てやすいでしょう。
問題になるのが3番目です。医師の診断書、福祉関係者に書いてもらう本人情報シート、親族に記入を依頼する意見書は、いずれも相手の都合で日数が変わります。申立てまでの期間が読めない原因は、ほぼこの3種類に集中しています。
準備を始めるときは、まずこの3種類を誰に頼むのかを決めてください。主治医が決まっていない、担当のケアマネジャーがいない、連絡先の分からない親族がいるという状態であれば、書式を書き始めるより先にそこを埋めるほうが結果として早く終わります。
家庭裁判所に提出する書類の一覧と入手先

申立人が作成する書式は、後見開始申立書、申立事情説明書、親族関係図、本人の財産目録、収支予定表、後見人等候補者事情説明書、そして親族の意見書です。書式は裁判所の申立書のページからダウンロードできます。
財産目録と収支予定表には、記載した内容の裏づけとなる資料を添えます。預貯金なら通帳の写し、不動産なら固定資産評価証明書や登記事項証明書、年金なら振込通知書という具合に、項目と資料が対応するようにそろえてください。
書類の点数が多いように見えても、本人の財産の状況が単純であれば添付する資料も少なく済みます。逆に不動産や有価証券が複数ある場合は、資料集めが作業の中心になっていきます。
添付書類のうち住民票については、戸籍の附票で代えられる場合もあるでしょう。どちらでも構わないと案内されることが多いものの、本人の住所の移り変わりを示す必要があるときは戸籍の附票を選んでください。
申立費用は、申立手数料として収入印紙800円分、登記手数料として収入印紙2,600円分、そして連絡用の郵便切手です。切手の額は裁判所によって違うため、提出先に確認しましょう。
診断書と本人情報シートの取り方

診断書は本人の主治医に作成を依頼します。書式は家庭裁判所が定めたものを使い、日常生活の状況や判断能力について医師の意見を記載してもらう内容です。作成費用は医療機関ごとに異なり、あらかじめ窓口で確認しておくと見通しが立ちます。
本人情報シートは、ケアマネジャーや相談員などの福祉関係者に記入してもらう書類です。本人の生活の様子を医師に伝えるための資料であり、提出が必ず求められるものではありません。
それでも用意する意味は小さくないでしょう。医師は診察室で会う短い時間しか本人を知りませんが、福祉関係者は日常の様子を継続して見ています。そこで得た情報が診断書の精度を上げ、結果として家庭裁判所の判断材料が厚くなります。
順序としては、まず福祉関係者に本人情報シートを依頼し、できあがったシートを診断書の書式と一緒に医師へ渡してください。どちらも相手の作業が入るため、依頼から受け取りまで2週間から1か月ほど見ておくと安心です。
判断能力の程度をめぐって医師の診断だけでは足りないと家庭裁判所が判断した場合には、あらためて鑑定が行われることがあります。鑑定費用として10万円から20万円程度がかかるという説明を目にしますが、実際に鑑定が行われる割合は約3.8%にとどまります。金額の大きさだけで身構える必要はありません。
判断能力と法律行為の関係については、遺言の場面を扱ったこちらの記事も参考にしてください。
<関連記事>
遺言書は認知症でも有効?遺言能力の判断基準と無効回避のコツ
登記されていないことの証明書はどこで取れるのか
登記されていないことの証明書は、法務局の本局の戸籍課でしか取り扱っていません。最寄りの支局や出張所へ行っても交付を受けられないため、書類集めでつまずきやすい代表格です。
東京法務局の案内によれば、窓口で申請できるのは東京法務局後見登録課または全国の法務局と地方法務局の本局の戸籍課で、支局と出張所では取り扱っていません。郵送請求は東京法務局後見登録課のみが対応しています。
手数料は1通につき300円で、収入印紙で納めます。申請できるのは証明対象者本人、その四親等内の親族、そしてこれらの方から委任を受けた方だけなので、いとこの子など四親等を超える親族は取得することができません。
所要時間の目安は窓口なら10分から20分、郵送なら申請書が法務局に到達してから1週間程度です。遠方にお住まいの場合や本局まで距離がある場合は、はじめから郵送を選んだほうが早く済むこともあるでしょう。
この証明書は、本人がまだ後見や保佐、補助の登記を受けていないことを確かめるためのものです。すでに登記がある方について重ねて申し立てることはできないため、入口の確認として位置づけられています。
書類を集める順番と有効期限の注意点

必要書類でやり直しが起きる最大の原因は、有効期限のある書類を早く取りすぎることです。戸籍謄本や住民票、登記されていないことの証明書、診断書はいずれも発行から3か月以内のものを求められます。
そこで組み立てたいのが、他人に依頼する書類を先に動かし、自分で取れる書類を後に回すという順番です。依頼にかかる日数は読めませんが、役所の証明書は行けばその日に手に入ります。
具体的には、まず福祉関係者へ本人情報シートを依頼し、並行して申立書や財産目録の下書きを進めます。シートが届いたら医師へ診断書を依頼し、その待ち時間のあいだに親族へ意見書の記入をお願いしてください。
証明書類の取得は、診断書の受け取りに目処が立ってからで十分です。期限の起算点がそろうため、提出直前に一部だけ期限切れという事態を避けられます。
財産の調査に時間がかかりそうな場合は、順番よりも先にそちらへ着手しましょう。通帳の記帳や残高証明書の取り寄せ、不動産の資料集めは、金融機関や役所とのやり取りが重なるほど日数が伸びていきます。
なお、申立てをいったん行った後は、家庭裁判所の許可がなければ取り下げられません。候補者として挙げた親族がそのまま後見人に選ばれるとは限らず、専門職が選ばれることもありますが、その結果に納得できないという理由で取り下げることは認められない点にご注意ください。
提出した後の流れと期間の目安
書類を提出してから審判が出るまでの流れも、あらかじめ知っておくと準備の重さが変わります。提出後は申立人や候補者との面接があり、必要に応じて親族への意向照会や本人との面接が行われ、そのうえで審判に至るという順序です。
申立てから審判までにかかる期間は、事案によって幅がありますが2か月から4か月ほどを見込んでおくとよいでしょう。鑑定が行われる場合はさらに日数が加わります。
審判が確定すると、家庭裁判所からの嘱託によって後見の登記がされます。後見人としての仕事はそこから始まるため、書類の準備は入口にすぎないという心づもりでいてください。
提出前に確認したいことと相談先

提出前に見直したいのは、書類の点数ではなく期限と対応関係です。3か月の期限を過ぎているものがないか、財産目録の記載と添付資料が食い違っていないかを確認してください。
申立先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。本人が施設に入所している場合は住民票上の住所と実際の居所が異なることがあるため、どちらの管轄になるのかを事前に問い合わせておくと確実でしょう。
司法書士に依頼する場合、書類の収集と申立書類の作成を任せられます。どの資料が必要かの判断、財産目録の作り方、医師や福祉関係者への依頼の進め方まで含めて相談できるため、平日に動きにくい方ほど負担の差が大きくなります。
国松司法書士法人は司法書士と行政書士、土地家屋調査士のトリプルライセンス体制で、相続と遺言の相談と手続きに27年目、累計20,000件を超える案件を扱ってきました。後見の申立ては相続の準備や不動産の処分と同じ場面で必要になることが多く、前後の手続きまで見通したうえで書類をそろえられる体制が役に立ちます。
専門家に相談すべきタイミングを迷っている方は、こちらの記事も参考にしてください。
後見申立ての必要書類についてよくある質問
後見申立ての必要書類は全部でいくつありますか?
申立人が作成する書式が7種類前後、添付書類が本人と候補者の分を合わせて10種類前後になるのが一般的です。ただし本人の財産の状況によって添付する資料の数は変わるため、点数そのものより中身の対応関係を優先してください。
必要書類の有効期限はどれくらいですか?
戸籍謄本や住民票、登記されていないことの証明書、診断書は、いずれも発行から3か月以内のものを求められます。取得が早すぎると提出時に期限切れになるため、依頼が必要な書類から先に動かすのが安全です。
本人情報シートの提出は必須ですか?
提出が必須の書類ではありません。ただし医師が診断書を作成する際の資料になり、本人の日常の様子を伝える役割を持つため、用意できるなら添えたほうが判断材料は厚くなります。
登記されていないことの証明書は市区町村の窓口で取れますか?
取れません。法務局と地方法務局の本局の戸籍課、または東京法務局後見登録課の扱いで、支局と出張所では交付を受けられません。郵送で請求する場合の宛先は東京法務局後見登録課のみです。
鑑定は必ず行われますか?
必ず行われるわけではありません。家庭裁判所が本人の判断能力について鑑定が必要だと判断した場合に実施されるもので、実際の実施率は約3.8%にとどまります。
書類を提出した後に申立てを取り下げられますか?
家庭裁判所の許可がなければ取り下げられません。候補者として挙げた方が後見人に選ばれなかったという理由だけでは、取り下げは認められない扱いになります。
後見申立てのご相談は国松司法書士法人へ
後見申立ての準備は、書類の点数ではなく段取りで決まります。誰に何を依頼するのかを先に決めてしまえば、あとは待ち時間を使って自分の作業を進めるだけです。
国松司法書士法人は、相続と遺言のご相談を27年にわたってお受けしてきました。2026年8月25日よりJR国分寺駅北口から徒歩4分の事務所で、必要書類の洗い出しから収集、申立書類の作成、家庭裁判所への提出まで、続けてご相談いただけます。
国分寺市や国立市、府中市、小平市、小金井市といった多摩エリアはもちろん、遠方のご家族が申立てに関わる場合も全国対応で取り組んでいます。どこから手を付ければよいか分からないという段階でも構いません。
初回のご相談は無料です。本人の状況と、把握している範囲の財産をお聞かせいただければ、必要書類と進め方の見通しをお伝えします。
参考文献
1. 裁判所「後見開始」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_01/index.html
2. 裁判所「後見開始の申立書」 https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_01/index.html
3. 東京法務局「登記されていないことの証明申請について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/i_no_02.html
4. 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html
5. 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」 https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人【国分寺駅北口4分】
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
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