【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
家族信託のご相談をお受けするとき、最初にいただく質問はほとんどが費用についてです。調べてみると30万円から100万円という幅のある数字が並んでいて、自分の家の場合にいくらかかるのか分からないまま相談にいらっしゃる方も少なくありません。
幅が広く見える理由は、家族信託の費用が1つの料金ではなく、性質の違う複数の費用の合計だからです。専門家に払う報酬、公証役場に払う手数料、法務局に納める税金は、それぞれ決まり方がまったく違います。信託財産に不動産を入れるかどうかだけでも、総額は十万円単位で動きます。
もう1つ見落とされやすいのが、設定するときに一度だけかかる費用と、信託が続く限りかかり続ける費用の区別です。この2つを分けずに見積もりを眺めていると、契約した後になって想定外の負担に気づくことになりかねません。
ここでは当事務所が、家族信託の費用を初期費用と続く費用に分けて整理し、登録免許税と公証人手数料という法令で金額が決まっている部分を一次情報から示したうえで、見積もりを比べるときに見るべき箇所までお伝えします。制度上のデメリット全般は別の記事で扱うため、この記事では費用に関係する範囲にとどめました。
家族信託の費用は初期費用と続く費用に分かれる

家族信託の費用は、設定するときに一度だけかかる初期費用と、信託が続く限りかかる費用の2つに分かれます。相場として語られる30万円から100万円という金額は、ほとんどが前者だけを指しています。
初期費用に入るのは、専門家へのコンサルティング報酬、信託契約書の作成報酬、公正証書にするときの公証人手数料、そして不動産を信託する場合の登記報酬と登録免許税でした。信託する財産の中身と金額で総額が決まるため、現金だけを信託するご家庭と自宅を含めるご家庭とでは桁が変わってきます。
続く費用のほうには、受託者への信託報酬、信託財産に収益不動産がある場合の毎年の税務申告、受託者が交代したときの手続き費用などが当たるとお考えください。家族が受託者になるときは信託報酬を無償と定められるため、ここをゼロにできるご家庭は多くあります。
当事務所でご相談をお受けするときも、まずこの2つを分けてお見せするようにしています。初期費用だけを見て高いと感じられた方が、続く費用まで含めて成年後見と並べ直すと、受け止め方が変わる場面は珍しくありません。
専門家報酬が信託財産の1%を基準に決まる理由

専門家に払う報酬のうち、設計全体を見るコンサルティング報酬は、信託財産の評価額のおよそ1%を基準に設定されている例が多くあります。あわせて最低報酬額が決められていて、財産額が小さくても一定の金額を下回らない形が一般的でした。
定額にならない理由は、信託財産の種類と金額で設計の難しさと背負う責任が変わるからです。不動産が何筆あるのか、受益者を次の世代まで続けるのか、どの金融機関と調整するのかによって、確認すべき事項の量はまったく違ってきます。
最低報酬額が置かれるのは、財産額が小さくても工程の数が減らないためでしょう。家族構成の聞き取り、信託の目的の整理、契約条項の設計、公証役場との事前打ち合わせ、金融機関への説明という流れは、信託財産が1,000万円でも1億円でも同じように必要になります。
このほかに、信託契約書の作成報酬が10万円から30万円程度、不動産の信託登記の代行報酬が1管轄あたり10万円前後という水準で示されている例を見かけます。いずれも各事務所やメディアが公開している金額であって、当事務所の報酬額としてお示しするものではありません。
専門家に相談する時期そのもので迷われている方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
信託登記の登録免許税は土地と建物で税率が違う

不動産を信託すると、所有権の信託の登記に登録免許税がかかります。税率は土地と建物で違っていて、土地には軽減措置がある一方、建物には軽減がありません。
国税庁の案内によれば、課税標準となる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は原則としてその価格です。売買価格や住宅ローンの残高ではなく、固定資産税の課税明細に載っている評価額で計算するとお考えください。
土地の所有権の信託の登記の税率は、本則が0.4%で、租税特別措置法第72条第1項の軽減措置により0.3%に下がります。この軽減は令和8年度税制改正で3年延長され、適用期間は令和8年(2026年)4月1日から令和11年(2029年)3月31日までとなりました。建物の信託の登記には同じ軽減がないため、0.4%のまま計算します。
たとえば固定資産税評価額が土地2,000万円、建物1,000万円の自宅を信託する場合、登録免許税は土地が6万円、建物が4万円で、合計10万円という計算になります。司法書士に登記を頼むときの報酬はこれとは別にかかるため、見積もりで実費と報酬が分かれているかを必ず確かめてください。
公正証書の作成手数料は信託財産の価額で決まる

信託契約を公正証書にするときの公証人手数料は、公証人手数料令という政令で決まっています。事務所ごとに金額が違うわけではないため、ここは見積もりを比べても差がつきません。
同令の別表では、法律行為の目的の価額が1,000万円を超え3,000万円以下なら2万6,000円、3,000万円を超え5,000万円以下なら3万3,000円、5,000万円を超え1億円以下なら4万9,000円と定められています。家族信託では信託する財産の価額がこの目的の価額に当たるため、信託財産が大きいほど手数料も上がる仕組みでした。
目的の価額を算定できないときは500万円とみなす定めもあり、その区分の手数料は1万3,000円です。実際にはこのほかに正本と謄本の交付手数料や用紙代がかかるため、手数料令の金額に数千円が上乗せされると見ておいてください。
公正証書にすること自体は法律上の義務ではありません。ただし信託口口座の開設にあたって公正証書を求める金融機関が多いため、実務では必要な手続きとして見積もりに入れておくほうが安全です。
信託口口座を開ける金融機関は限られる
費用の話に入る前に確かめていただきたいのが、信託口口座を開ける金融機関が近くにあるかどうかです。ここでつまずくと、契約書を作り直すことになって費用が膨らみます。
信託財産は受託者の固有財産と分けて管理する必要があり、現金を預けるための口座は受託者個人の口座とは別に用意しなければなりません。受託者個人の名義で預かったままにすると、受託者が亡くなったときや受託者の債権者から差押えを受けたときに、信託財産が巻き込まれてしまいます。
ところが信託口口座を取り扱う金融機関は限られていて、地域によっては選択肢が1行か2行しかありません。口座開設の手数料を設けている金融機関もあり、取扱いのある金融機関でも契約書の文案を事前に審査する運用が一般的です。
審査に通らない契約書を作ってしまうと、条項を直して公証役場をやり直すことになり、公証人手数料も専門家報酬も二重にかかりかねません。当事務所では、信託の設計に入る前にどの金融機関を使うのかを決めていただくようにしています。
信託が続く限りかかる費用を見落とさない
初期費用を払い終えても、家族信託には続く費用があります。金額としては小さくても、信託が10年20年と続く前提で考えると無視できません。
受託者への信託報酬は、家族が受託者になるなら無償と定められます。実際にお子さまが受託者になるご家庭では、信託報酬を設けない設計がほとんどです。
負担として残りやすいのは、信託財産に収益不動産が入る場合の毎年の手続きでしょう。受託者が税務署へ提出する書類が増え、確定申告の内容も信託前とは変わってきます。信託した不動産から赤字が出てもほかの所得と損益通算できない取扱いもあるため、収益不動産を信託するかどうかは、設計に入る前に税理士へご確認ください。税務の判断は税理士の領域であり、当事務所がお答えできる範囲を超えます。
このほか、受託者が亡くなって交代するときの変更登記、信託が終わったときに受益者へ名義を戻す登記にも、それぞれ登録免許税と報酬がかかります。設定時の金額だけでなく、信託が終わるまでにいくらかかるのかという目で見積もりを読んでください。
成年後見と比べると費用のかかり方が逆になる

家族信託と成年後見は、費用のかかり方が逆の形をしています。家族信託は初期費用が重くて月々の負担が軽く、法定後見は申立ての費用が軽いかわりに専門職が就けば報酬が続きました。
法定後見の申立てにかかる実費は数万円の範囲に収まります。ただし最高裁判所の成年後見関係事件の概況によれば、令和7年に親族以外が成年後見人等に選任されたものは全体の約83.6%でした。親族が選ばれない事案のほうが多いため、専門職への報酬が本人の財産から毎年支払われていく前提で考えるほうが現実的です。
監督人については条件が変わります。同じ資料では、成年後見人等に加えて監督人が選任されたものは1,375件で全体の約3.4%にとどまりました。法定後見で監督人の報酬まで必ず上乗せされるわけではないという意味です。一方で任意後見は、契約が発効する際に家庭裁判所が任意後見監督人を選任する仕組みのため、発効時に別途監督人の報酬がかかります。
もう1つ押さえておきたいのが、家族信託は本人に判断能力があるうちでなければ契約できないという点です。判断能力が落ちてからでは成年後見しか選べなくなるため、費用の比較は元気なうちにしか意味を持ちません。判断能力と手続きの関係については、こちらの記事も参考になります。
費用で後悔しない見積もりの見方
見積もりを比べるときは、総額ではなく中身をそろえてから並べてください。同じ50万円でも、含まれている工程が違えば比べたことになりません。
確かめていただきたいのは3つあります。1つ目は信託契約書の作成が報酬に含まれているかどうか、2つ目は不動産の信託登記の代行が何管轄分まで含まれているかどうか、3つ目は信託口口座を開く金融機関との調整まで引き受けてもらえるかどうかです。
あわせて、登録免許税と公証人手数料という実費が見積もりに入っているかも見てください。実費を別扱いにしている見積もりは一見安く見えますが、不動産を含む信託では十万円単位の差になってしまいます。
安さだけで選んだ結果、金融機関の審査に通らない契約書ができあがり、作り直しでかえって高くついたというご相談も届きます。当事務所は初回のご相談を無料でお受けしていますので、他社のお見積もりをお持ちいただいて中身を一緒に確認するという使い方もしていただけます。
よくある質問
家族信託の費用は毎年かかりますか?
家族が受託者になる設計であれば、毎年決まってかかる費用はほとんどありません。ただし信託財産に収益不動産が入る場合は、毎年の税務申告の手間と費用が続きます。受託者が交代したときや信託が終わったときにも、登記の費用がかかるとお考えください。
家族が受託者になれば信託報酬はかからないのですか?
信託契約で無償と定めれば、受託者への報酬はかかりません。実際にお子さまが受託者になるご家庭では、信託報酬を設けない設計が一般的です。報酬を定めるかどうかは契約で自由に決められるため、設計の段階でご家族の意向を確かめておいてください。
公正証書にしないと家族信託はできませんか?
公正証書にすることは法律上の義務ではないため、私文書の契約書でも家族信託は成立します。ただし信託口口座の開設にあたって公正証書を求める金融機関が多いため、実務では公正証書にしておくほうが確実です。
信託登記の登録免許税はいくらになりますか?
固定資産課税台帳に登録された価格に税率をかけて計算します。土地は軽減措置により0.3%、建物は0.4%です。固定資産税評価額が土地2,000万円、建物1,000万円であれば、合計10万円という計算になります。
家族信託を自分たちだけで作って費用を抑えられますか?
契約書を自分で作ること自体は可能ですが、信託口口座の審査に通らない、条項の不備で目的を果たせないといった事態が起こりえます。作り直しになれば公証人手数料も登記費用も重ねてかかるため、結果として高くつく場合が多いとお考えください。
成年後見と家族信託ではどちらが費用を抑えられますか?
期間の長さによって答えが変わります。初期費用だけを見れば成年後見のほうが軽く、10年20年と続く前提で総額を見れば家族信託のほうが抑えられる場合があります。ご本人の年齢と財産の中身を踏まえて試算してみてください。
家族信託のご相談は国松司法書士法人へ
家族信託の費用は、信託する財産の中身が決まらなければ正確には出せません。逆にいえば、何を信託するのかさえ整理できれば、総額の見通しはその場でお伝えできます。
当事務所は、相続と遺言のご相談と手続きに27年目を迎え、累計20,000件を超えるご依頼をお受けしてきました。司法書士・行政書士・土地家屋調査士のトリプルライセンス体制のため、信託の設計から契約書の文案作成、公証役場との調整、信託登記までを窓口を分けずに進められます。
国分寺市や国立市、府中市、小平市、小金井市といった多摩エリアはもちろん、ご家族が遠方にお住まいの場合にも全国対応で取り組んでいます。家族信託にするか成年後見にするかを決めていない、費用の見当だけ知りたいという段階でも構いません。
初回のご相談は無料です。信託をお考えの財産が分かる資料と、固定資産税の課税明細書をお持ちいただければ、初期費用と続く費用の内訳をその場で整理してお伝えします。
参考文献
1. 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
2. 国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」
3. 国土交通省「令和8年度税制改正概要」
4. e-Gov法令検索「公証人手数料令」
5. 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人【国分寺駅北口4分】
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
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