【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
親から実家を相続した、あるいは配偶者名義の不動産を引き継いだ。
そんなとき、まず気になるのが「相続登記にいくらかかるのか」という費用の問題ではないでしょうか。ネットで調べると「相場は10万円」「いや15万円」「30万円かかった」と情報がばらつき、かえって不安になった方も多いと思います。
相続登記の費用は、実は3つの要素の積み重ねで決まります。この構造を理解すれば、なぜ相場に幅が出るのか、自分のケースならいくらになりそうか、どこを工夫すれば抑えられるのかが見えてきます。
2024年4月から相続登記は義務化され、正当な理由なく3年以内に申請しなければ10万円以下の過料が科される可能性も生まれました。「費用がかかるから後回し」という選択が、以前よりリスクを伴うようになったわけです。
本記事では、司法書士報酬・登録免許税・実費という費用の内訳を分解したうえで、報酬に幅が出る本当の理由、費用を現実的に抑える方法、そして「安さだけで選ぶ」ことの落とし穴まで、登記実務の現場目線でお伝えします。
相続登記の費用相場は総額15万円から20万円が一つの目安
先に全体像をお伝えします。司法書士に依頼して不動産1件分の相続登記を行う場合、総額でおおむね15万円から20万円に収まるケースが多いといえるでしょう。ただし、この数字はあくまで「標準的な一戸建て1件を、相続人が少人数で分ける」という前提での目安に過ぎません。
なぜ「相場」を調べると6万円から30万円超まで幅広い数字が出てくるのか。それは、相続登記の費用が単一の料金ではなく、性質の異なる3つの費用を合算したものだからです。具体的には、国に納める「登録免許税」、書類集めにかかる「実費」、そして専門家に払う「司法書士報酬」の3つに分かれます。
この3つのうち、登録免許税は不動産の評価額で機械的に決まり、実費も数千円程度でほぼ一定です。相場を大きく動かしているのは、3つ目の司法書士報酬です。まずは費用の全体構造を、要素ごとに見ていきましょう。
相続登記の費用は3種類に分けて考える

相続登記の費用を正しく把握するコツは、性質の違う3つの費用を切り離して考えることにあります。ひとまとめに「登記費用」と捉えると相場観がぼやけてしまいますが、分解すればそれぞれの金額はかなり明確に見積もれます。
登録免許税は固定資産税評価額の0.4%
登録免許税は、相続登記を申請するときに国へ納める税金です。金額は「不動産の固定資産税評価額 × 0.4%」で計算され、この税率は法律で定められているため、どの司法書士に頼んでも変わりません。
たとえば固定資産税評価額が2,000万円の自宅なら、2,000万円 × 0.4%で8万円が登録免許税になります。評価額は毎年春に届く固定資産税の課税明細書、または市区町村で取得する固定資産評価証明書で確認できます。
計算には端数処理のルールがあり、評価額は1,000円未満を切り捨て、算出した税額は100円未満を切り捨てます。土地と建物が複数あれば、すべての評価額を合計してから計算する点も覚えておくとよいでしょう。
ひとつ注意したいのは、法定相続人ではない人が遺贈で不動産を取得する場合です。この場合は税率が0.4%ではなく2.0%と5倍に跳ね上がります。血縁のある相続人が相続する場合に軽減される仕組みになっているため、内縁の方や親族外への遺贈を考えている場合は、税負担が大きく変わる点に留意してください。
必要書類の取得実費は数千円から
相続登記には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍、固定資産評価証明書、住民票などをそろえる必要があります。これらの取得手数料が実費として発生します。
戸籍謄本は1通450円から750円、住民票や評価証明書は1通300円前後が目安です。相続人の数や、被相続人が本籍を何度も移していた場合は取得する戸籍が増えるため、総額としては数千円から、多くても1万円台に収まるのが一般的でしょう。郵送で遠方の役所から取り寄せる場合は、定額小為替の手数料や送料も少し加わります。
司法書士報酬は10万円から15万円が中心
3つ目が、手続きを代行する司法書士へ支払う報酬です。相続登記の司法書士報酬は事務所ごとに自由に設定できるため、ここが相場に最も幅を生む部分になります。全国的な水準としては、不動産1件かつ標準的な内容であれば10万円から15万円あたりが中心的な価格帯といえるでしょう。
報酬には、登記申請の代行だけでなく、戸籍の収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成といった付随業務が含まれることが多くあります。どこまでを報酬の範囲に含めるかは事務所によって異なるため、単純な金額の比較だけでは実態がつかみにくいのが正直なところです。
司法書士報酬の相場に幅が出る本当の理由

「相場を調べたのに、事務所ごとの見積もりが倍以上違う」という声をよく耳にします。この差は、報酬の決め方そのものに2つの流派があることに起因します。ここを理解すると、見積書を受け取ったときの納得感がまるで変わってくるでしょう。
ひとつは、内容を問わず一律いくらとする定額制です。「相続登記一式8万8,000円」のように、わかりやすさを打ち出した料金体系がこれにあたります。もうひとつが、基本報酬に条件ごとの加算を積み上げていく方式です。一見安く見える基本料金でも、加算が重なると総額が膨らむことがあります。
では、どんな条件で報酬が加算されるのか。実務でよく加算対象になるのは、不動産の筆数が多い場合、相続人の人数が多い場合、不動産の評価額が高額な場合、そして相続登記をしないうちに次の相続が発生した数次相続のケースです。特に数次相続は権利関係の調査に手間がかかり、戸籍も膨大になるため、報酬が大きく上振れしやすい典型例といえます。
見積書を受け取ったら、金額の大小より先に「実費と報酬が分けて書かれているか」を確認してみてください。登録免許税や戸籍取得費といった実費と、司法書士報酬が混在した「一式」表記だと、何にいくら払っているのかが見えません。良心的な事務所ほど、実費と報酬を明確に区分し、加算の有無まで丁寧に説明してくれる傾向があります。この一点を見るだけでも、事務所の姿勢はかなり判断できるでしょう。
費用の総額はケースでこれだけ変わる

抽象的な相場だけではイメージがつかみにくいため、代表的なケースで総額の目安を組み立ててみましょう。
評価額1,500万円の一戸建て1件を、相続人が3人で1人が取得するケースを考えます。登録免許税は1,500万円 × 0.4%で6万円、戸籍などの実費が5,000円程度、司法書士報酬を10万円と見込むと、総額はおよそ16万5,000円になります。標準的な相続登記であれば、このあたりが現実的な着地点でしょう。
一方、評価額の合計が4,000万円で、土地と建物が複数筆にわたり、相続人が5人で数次相続も絡むケースでは様相が変わります。登録免許税だけで16万円、実費も戸籍が増えて1万円超、司法書士報酬も加算が重なって15万円から20万円程度になることがあります。総額で30万円を超える見積もりが出るのは、多くの場合こうした複雑な事情が背景にあると考えてよいでしょう。
つまり、ネット上で見かける「30万円かかった」という体験談は、決して法外な請求ではなく、不動産や相続関係が複雑だった結果である可能性が高いといえます。自分のケースがどちらに近いのかを見極めることが、適正な費用感をつかむ第一歩になります。
相続登記の費用を抑える現実的な方法

費用の構造がわかれば、どこを工夫すれば抑えられるかも見えてきます。ここでは、実際に効果のある3つの方法を紹介します。
戸籍や書類を自分で集める
司法書士報酬のうち、戸籍収集の代行分は自分で対応すれば削減できます。被相続人の本籍地が転々としていなければ、戸籍集めはそれほど難しくありません。2024年3月からは、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を一括請求できる広域交付の制度が始まり、以前より集めやすくなりました。時間と手間を許容できるなら、書類収集を自分で行い、登記申請だけを依頼するという分担も選択肢になるでしょう。
相続人申告登記で登録免許税をかけずに義務を果たす
遺産分割協議がまとまらず、すぐに正式な相続登記ができない場合の裏技が、相続人申告登記です。これは「自分が相続人である」旨を法務局へ申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたとみなしてもらえる制度になります。登録免許税がかからず、相続人が単独で申し出られるため、過料のリスクを回避しながら費用を先送りできる点が利点でしょう。あくまで暫定的な措置であり、後日きちんとした相続登記は必要になりますが、期限に追われている場合の有効な一手といえます。
土地の免税措置を確認する
評価額100万円以下の土地については、相続登記の登録免許税が免税になる措置があります。この特例は当初2025年3月末までとされていましたが、その後延長され、現在は2027年(令和9年)3月31日まで適用されます。古い記事では期限を誤って記載している例も見かけますので、山林や田畑など評価の低い土地を相続した方は、この措置が使えないか一度確認してみてください。
費用の安さだけで司法書士を選ぶことの落とし穴

費用を抑えたいという気持ちは当然ですが、報酬の安さだけを基準に事務所を選ぶことには、実は見えにくいリスクがあります。
相続登記で最も怖いのは、金額の高さよりも「登記漏れ」です。たとえば自宅の前面道路に私道の持分がある場合、その私道は固定資産税が非課税で課税明細書に載っていないことが少なくありません。安さを売りにした流れ作業の登記では、この私道の持分が見落とされ、後年その不動産を売却しようとした段階で登記漏れが発覚し、改めて手続きし直すはめになるケースがあります。
数次相続が隠れているケースも同様でしょう。表面的には親から子への単純な相続に見えても、実は間に登記されていない世代の相続が挟まっていることがあります。経験の浅い担当者や、とにかく安く速くを優先する処理では、こうした権利関係の綻びが見過ごされがちです。
司法書士報酬の数万円の差は、長い目で見れば決して大きな金額ではありません。むしろ、登記漏れや数次相続を確実に拾い上げてくれるか、不動産全体を丁寧に調査してくれるかという「仕事の質」こそが、後々のトラブルを防ぐうえで重要になります。見積もりを比較する際は、金額と同じくらい、調査の丁寧さや説明の分かりやすさに目を向けてほしいと思います。
相続登記の費用は誰がいつ払うのか
最後に、実務でよく質問される支払いの疑問にも触れておきます。
登録免許税や司法書士報酬を誰が負担するかについて、法律上の明確な決まりはありません。実際には、その不動産を取得する相続人が負担するのが一般的ですが、相続人全員で費用を分担するケースもあります。遺産分割協議の際に、費用の負担者もあわせて話し合っておくと後の揉め事を防げるでしょう。
支払いのタイミングは、多くの事務所で手続き完了時にまとめて精算する形をとっています。着手時に実費分だけ預かり、登記完了後に報酬を請求する事務所もあり、方式は事務所ごとに異なるでしょう。見積もりの段階で、支払い時期についても確認しておくと安心です。
相続登記の費用に関するご相談は国松司法書士法人へ
「自分の不動産だと相続登記の費用はいくらになるのか」「複数の不動産があって、どこから手をつければよいかわからない」「義務化の期限が迫っているが、遺産分割がまとまらない」。相続登記の費用や手続きについてこうした不安を抱えている方は、相続・遺言の相談と手続きの実績27年目、累計20,000件超の国松司法書士法人にご相談ください。
当事務所は、司法書士・行政書士・土地家屋調査士のトリプルライセンスを保有しています。相続登記に必要な調査から書類収集、登記申請までをワンストップで対応でき、土地の測量や境界確認が絡む複雑なケースにも一貫して向き合える点が強みでしょう。固定資産税の課税明細書をお持ちいただければ、登録免許税と報酬を含めた費用の概算を、その場でお伝えすることも可能です。
初回相談は無料で、国分寺市・国立市・府中市・小平市・小金井市など多摩エリアはもちろん、全国からのご相談も歓迎しております。相続登記は先送りするほど権利関係が複雑になり、費用もかさみがちです。少しでも気になった今のタイミングで、一度ご相談ください。
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人【国分寺駅南口2分】
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
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