
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
親から子へ、夫婦間で、あるいは祖父母から孫へ、不動産を無償で譲り渡す「贈与」を行ったら、法務局で所有権移転登記(贈与登記)を申請しなければなりません。
贈与登記には法律上の期限こそ定められていませんが、登記を先送りにしている間に贈与者が認知症になったり、亡くなったりすると、手続きが格段に複雑になります。最悪の場合、贈与の事実自体が争われるリスクさえあるでしょう。
本記事では、贈与登記の手順を5つのステップに分けてわかりやすく解説するとともに、必要書類の一覧、登録免許税や贈与税の計算方法、そして自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合の違いまでお伝えします。
贈与登記とは何か

贈与登記とは、不動産(土地・建物・マンション)を贈与によって取得した際に、法務局で所有権移転登記を申請する手続きのことです。登記原因は「贈与」と記載され、売買による移転登記とは区別されます。
不動産の所有権は、当事者間では贈与契約の成立によって移転しますが、登記をしない限り第三者に対して「自分が所有者だ」と主張できません(民法第177条)。たとえば、贈与者が同じ不動産を別の第三者に売却し、先に売買の登記が入ってしまえば、贈与を受けた側は所有権を失うことになります。
贈与を受けたら速やかに登記を完了させるのが鉄則です。
贈与登記の手順を5ステップで解説

ステップ1:対象不動産の調査・確認
最初に、登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得し、対象不動産の現在の登記状況を確認します。取得費用は1通600円(オンライン請求・郵送受取は520円)です。
確認すべきポイントは、所有者の氏名・住所が現在の情報と一致しているかどうかです。贈与者が引っ越して住所が変わっている場合は、贈与登記の前に住所変更登記を済ませる必要があります。また、抵当権が設定されている不動産を贈与する場合は、金融機関との調整が先行して必要になるため注意しましょう。
マンションの場合は、敷地権の有無や専有部分の家屋番号も正確に把握しておく必要があります。登記簿上の表記と実際の住居表示が異なることは珍しくないため、必ず登記事項証明書で確認してください。
ステップ2:必要書類を収集する
贈与登記に必要な書類は、贈与する側(贈与者)と贈与を受ける側(受贈者)でそれぞれ異なります。
贈与者が準備する書類として、登記済権利証(または登記識別情報通知)、印鑑証明書(発行から3か月以内)、固定資産評価証明書(または納税通知書の課税明細書)が必要です。権利証は再発行できないため、紛失している場合は司法書士による本人確認情報の作成や、事前通知制度等を利用する必要があり、手続きが一段階増えます。
受贈者が準備する書類は、住民票の写し1通です。本籍地やマイナンバーの記載は不要で、認印で足ります。
加えて、贈与の事実を証明するための贈与契約書と、登記原因を法務局に説明するための登記原因証明情報が必要になります。贈与契約書と登記原因証明情報は別々の書面として作成するのが一般的ですが、贈与契約書に登記原因証明情報の内容を兼ねさせることも実務上は可能です。
ステップ3:贈与契約書を作成する
贈与契約は口頭でも成立しますが、書面にしておかないと後日「贈与したつもりはない」と争われるリスクがあります。登記申請においても贈与契約書(または登記原因証明情報)の添付が求められるため、作成は事実上必須でしょう。
贈与契約書に記載すべき事項は、贈与者と受贈者の氏名・住所、贈与の対象となる不動産の表示(登記簿どおりの所在・地番・家屋番号)、贈与の日付、そして双方の署名・押印(贈与者は実印)です。
贈与契約書には200円の収入印紙を貼付します。不動産の贈与契約書は「不動産の譲渡に関する契約書」には該当せず、印紙税額は一律200円と定められています。
法務局が公開している登記申請書のひな型も参考になりますが、個々のケースに応じた調整が必要なため、不安がある場合は司法書士に相談するのが確実です。
ステップ4:登記申請書を作成する
登記申請書は、A4サイズの用紙に所定の事項を記載して作成します。主な記載事項は、登記の目的(「所有権移転」)、原因(「令和○年○月○日贈与」)、権利者(受贈者の住所・氏名)、義務者(贈与者の住所・氏名)、添付情報、登録免許税額、そして不動産の表示です。
申請書には収入印紙(登録免許税相当額)を貼付し、贈与契約書、登記原因証明情報、権利証、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書などの添付書類と一緒に綴じます。
申請書の綴じ方にもルールがあり、申請書と収入印紙台紙を一括してホチキスで留め、各ページの継ぎ目に申請人(受贈者)の印鑑で契印を押す必要があります。
ステップ5:法務局に提出し、登記完了を確認する
作成した申請書と添付書類を、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。提出方法は窓口持参、郵送、オンラインの3通りですが、初めて自分で申請する場合は窓口での提出がお勧めです。法務局の登記相談で事前に書類を確認してもらうこともできます。
申請から登記完了までの処理期間は、通常1~2週間程度ですが、法務局の混み具合によっては1か月程度かかる場合もあります。不備がなければ、完了後に新しい登記識別情報通知(新しい権利証に相当する書面)が発行されます。不備がある場合は法務局から「補正」の連絡が入り、指定期日までに修正しなければ申請が却下される可能性もあるため、連絡先の電話番号は必ず正確に記載しておきましょう。
贈与登記にかかる費用

登録免許税
贈与による所有権移転登記の登録免許税は、国税庁の税額表によると、不動産の固定資産税評価額の2%(1,000分の20)です。相続による移転登記の0.4%と比較すると5倍の税率であり、贈与登記の費用面で最も大きなウェイトを占めます。
たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の土地であれば、登録免許税は40万円です。土地と建物の両方を贈与する場合は、それぞれの評価額を合算して計算します。
司法書士に依頼する場合の報酬
司法書士に贈与登記を依頼する場合、報酬の相場は5万円~10万円程度です。不動産の筆数や案件の複雑さによって変動しますが、書類の収集代行や贈与契約書の作成まで含めた「まるごとお任せ」プランを提供している事務所もあります。
国松司法書士法人でも贈与登記のご依頼を承っており、初回無料相談で費用の見通しを丁寧にご説明しています。
その他の実費
贈与契約書の収入印紙200円、登記事項証明書の取得費用(1通500円~600円)、贈与者の印鑑証明書取得費用(1通300円程度)、受贈者の住民票取得費用(1通300円程度)、固定資産評価証明書の取得費用(1通300円~400円程度)が加わります。
贈与登記で発生する税金を正しく理解する

贈与税
不動産の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、受贈者が贈与税の申告・納付を行わなければなりません。暦年課税の場合、年間110万円の基礎控除を超える部分に対して10%~55%の累進税率が適用されます。
不動産の贈与では評価額が110万円を超えるケースがほとんどであり、贈与税の負担は無視できません。たとえば、固定資産税評価額2,000万円の不動産を親から子に贈与した場合、贈与税だけで数百万円に達する可能性があります。
ただし、「相続時精算課税制度」を選択すれば、累計2,500万円まで贈与時の課税を繰り延べることが可能です。2024年1月からは相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設されており、制度選択の幅が広がりました。
また、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合は、最大2,000万円の配偶者控除(おしどり贈与)が使えるケースもあります。
贈与税の申告は税務上の判断を伴うため、贈与登記とあわせて税理士への相談を強くお勧めします。
不動産取得税
贈与による不動産取得にも不動産取得税が課されます。税率は原則4%ですが、2027年3月31日までの取得であれば土地・住宅は3%に軽減されており、宅地については課税標準が固定資産税評価額の2分の1となる特例措置も同期限で適用中です。
相続による不動産取得には不動産取得税はかからないため、贈与と相続のどちらが有利かを判断する際の重要な比較ポイントになります。
自分で申請するか司法書士に依頼するかの判断基準

贈与登記は自分で申請することも法律上は可能ですが、実務的にはいくつかのハードルがあります。
自分で申請するメリットは、司法書士報酬を節約できる点に尽きるでしょう。登録免許税や各種証明書の取得費用といった実費は誰が申請しても同額ですが、司法書士報酬の5万円~10万円を浮かせたいという動機は合理的です。
一方、自分で申請する場合のリスクとして、申請書や添付書類の不備による補正・却下、贈与契約書の記載漏れや表現の曖昧さによる将来のトラブル、登録免許税の計算ミスなどが挙げられます。特に、権利証を紛失している場合の本人確認手続きや、農地を贈与する場合の農業委員会の許可取得などは、専門知識がなければ対応が困難でしょう。
判断の目安としては、対象不動産が1筆の宅地で、権利証も揃っており、贈与税の問題もクリア済みであれば自分での申請も十分可能です。不動産が複数ある場合、権利証が見当たらない場合、農地や借地権が絡む場合は、司法書士への依頼を検討すべきでしょう。
贈与登記を放置するとどうなるか

「面倒だから後でいいか」と贈与登記を先延ばしにすると、以下のリスクが生じます。
贈与者が贈与後に同じ不動産を第三者に売却し、先に売買の登記が入ってしまえば、受贈者は所有権を主張できなくなります。民法の「対抗要件」の問題であり、登記なくして第三者には対抗できないという原則が適用されるためです。
また、贈与者が亡くなった場合、贈与登記が未了のまま相続が開始されると、手続きが一気に複雑化します。贈与の事実を証明する書類が不十分であれば、他の相続人から「贈与など聞いていない」と異議を唱えられ、遺産分割の紛争に発展する可能性もあるでしょう。
贈与者が認知症になった場合はさらに深刻です。本人の意思確認ができなくなるため、成年後見人の選任を経なければ登記手続きを進められず、時間も費用も大幅に膨らみます。
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【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人【国分寺駅南口2分】
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
- 初回のご相談は無料です
- 出張可(成約時は出張料無料)
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- 042-300-0255
- いますぐ電話する
- お電話は[月-土]9:00〜18:00までの受付となります。
上記以外の時間帯は大変に申し訳ございませんが「ご相談フォーム」よりご連絡をお願い致します。 - ご相談フォーム
当事務所のサービス
国松司法書士法人では、行政書士・土地家屋調査士事務所を併設し、不動産登記・会社法人登記・許認可・相続・遺言・成年後見・家族信託などのお悩みにワンストップで寄り添います。
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