【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
親の判断能力が落ちてきて、預金の管理や実家の手続きのために成年後見を考え始めたとき、多くの方が最初に不安を抱くのがお金の問題です。ネットで調べると「鑑定費用が10万円から20万円かかる」「専門家に頼むと数十万円」といった記述が並び、いったいいくら用意すればよいのか、かえって混乱してしまった方も少なくないでしょう。
結論から申し上げると、成年後見の申立てそのものにかかる費用は、多くのケースで1万円台から数万円程度に収まります。高額と語られがちな鑑定費用は、実際にはほとんどの事案で発生していません。この記事では、申立費用の内訳を裁判所の公式情報にもとづいて一つずつ整理したうえで、なぜ費用が高く見えてしまうのかという誤解の正体と、費用を誰がいつ負担するのかという実務の勘所まで踏み込んで解説します。
申立費用は「手続き費用」と「報酬」の二層に分かれる

成年後見のお金を考えるとき、まず頭の中を整理しておきたいことがあります。費用には性質のまったく異なる二つの層があり、これを混同すると全体像が見えなくなってしまうからです。
一つ目が、申立ての一時費用です。家庭裁判所へ後見開始を申し立てるときに、その場で必要になる印紙代や書類の取得費などがこれにあたります。二つ目は、制度を利用している間ずっと発生しうる後見人への報酬でしょう。専門家が後見人に選ばれた場合、その報酬は毎月継続します。
「成年後見 申立 費用」と検索する方が本当に知りたいのは、多くの場合この一つ目の一時費用でしょう。ところが検索結果には二つが入り混じって書かれていることが多く、月々の報酬額の話が混ざることで総額のイメージが実態以上にふくらんでしまいます。まずは申立てそのものにかかる一時費用から、正確に押さえていきます。
申立てにかかる一時費用の内訳

後見開始の申立てで実際に必要になるお金を、項目ごとに見ていきます。金額はいずれも裁判所が公表している標準的なものです。
家庭裁判所に納める印紙代と切手代
まず申立ての手数料として、収入印紙800円分が必要です。これに加えて、後見開始が認められた後の登記手続きのために、後見登記手数料として収入印紙2,600円分を用意しておきましょう。この二つを合わせた3,400円が、裁判所に納める手数料の基本になります。
さらに、裁判所からの連絡に使う郵便切手を予納します。金額は申立先の家庭裁判所によって多少異なりますが、後見開始の申立てでおおむね3,000円から4,000円程度が目安です。切手の種類と枚数まで細かく指定されるため、申立先の裁判所に確認してから購入すると無駄がありません。
なお、保佐や補助を申し立てる場合で、代理権や同意権の付与も同時に求めるときは、印紙代がそれぞれ800円ずつ加算されます。ここは自分の申立てがどの類型にあたるかで変わる部分でしょう。
診断書と証明書類の取得費用
申立てには、本人の判断能力を示す医師の診断書が欠かせません。診断書は裁判所所定の書式があり、かかりつけ医などに作成を依頼します。費用は医療機関によって幅がありますが、数千円程度に収まることが多いようです。
そのほか、本人や後見人候補者の戸籍謄本や住民票、本人が後見登記を受けていないことを示す「登記されていないことの証明書」なども必要になります。戸籍謄本は1通450円、住民票は市区町村によって200円から400円程度、登記されていないことの証明書は収入印紙300円分です。これらを合わせても、書類取得の実費は数千円の範囲に収まるのが一般的でしょう。
ここまでを合計すると、鑑定を除いた申立ての一時費用は、多くの場合1万円台から2万円程度です。世間で語られる「数十万円」という金額との大きな差は、次に説明する鑑定費用と専門家報酬が加わったときの話だという点を押さえておいてください。
鑑定費用が高額という誤解を解く

成年後見の費用について語られるとき、決まって登場するのが「鑑定費用が10万円から20万円かかる」という説明です。この一文こそ、成年後見は高いという印象を独り歩きさせている大きな原因ではないでしょうか。ここは丁寧に事実を確認しておく価値があります。
鑑定とは、申立時に提出する診断書とは別に、本人の判断能力を医学的により詳しく確かめるため、家庭裁判所が必要と判断したときに医師へ依頼する手続きです。ポイントは、これがすべての事案で行われるわけではないという事実にあります。
最高裁判所が公表した「成年後見関係事件の概況」(令和6年1月から12月)によると、実際に鑑定が実施されたのは全体の約3.8%にとどまっています。裏を返せば、9割以上の事案では鑑定そのものが行われていません。多くの方が身構える鑑定費用は、そもそも発生しない可能性のほうがはるかに高いわけです。
しかも、鑑定が行われた場合でも費用が青天井というわけではありません。同じ統計では、鑑定費用が10万円以下だった事案が全体の約87.1%を占めています。「10万円から20万円」という数字だけが強調されると身構えてしまいますが、実態としては、鑑定が行われること自体がまれで、行われても多くは10万円以下に収まるというのが正確な姿でしょう。数字の一部だけを切り取らず、発生頻度とあわせて理解することが、過剰な不安を手放す鍵になります。
費用の相談は国松司法書士法人でも承っています。ご自身のケースで鑑定が必要になりそうかどうかも含めて、着手前に見通しを立てておくと安心につながります。
専門家に依頼したときの費用と後見人報酬

申立ての一時費用に続いて、多くの方が気にするのが専門家に関わるお金です。ここには二つの異なる費用が含まれており、混同しないよう分けて理解しておく必要があります。
申立ての代行を専門家に頼む費用
一つは、申立ての手続き自体を司法書士や弁護士に代行してもらう費用です。書類の収集や申立書の作成、裁判所とのやり取りを任せる対価で、相場はおおむね10万円から30万円程度が目安でしょう。これは一度きりの費用で、申立てが完了すれば終わりです。自分で手続きを進めれば当然この費用はかかりませんが、収集すべき書類が多く、平日に役所や法務局を回る手間を考えると、専門家に任せる価値を感じる方も多いでしょう。
選ばれた後見人に払い続ける報酬
もう一つが、選任された後見人への報酬です。前述したとおり、これは制度を利用している間ずっと続く費用で、性質がまったく異なります。専門家が後見人になった場合、報酬額は本人の財産規模などをもとに家庭裁判所が決め、月額でおおむね2万円から6万円程度が目安でしょう。管理する財産が大きいほど、報酬も上がる傾向があります。
ここで見落とされがちなのが、後見人を誰にするかを申立人が自由に決められるわけではないという点です。家族を候補者にして申し立てても、家庭裁判所の判断で専門家が選ばれることは珍しくありません。また、後見監督人という監督役が付くと、その分の報酬も別途発生します。もっとも、後見監督人が選任されるのは統計上およそ3.4%の事案にとどまっており、必ず付くものではないという点も、あわせて知っておくとよいでしょう。
申立費用は誰がいつ払うのか

費用の金額とあわせて、意外と誤解が多いのが「誰が払うのか」という論点です。ここを取り違えると、家族が全額を抱え込むと思い込んでしまいかねません。
申立ての一時費用は、原則として申し立てた人がいったん負担します。ただし、家庭裁判所が認めた場合には、その費用を本人の財産から支出できるケースもあります。申立ての際に上申書を出せば、印紙代や鑑定費用などを本人負担としてもらえる取り扱いを用意している裁判所も少なくありません。つまり、家族が立て替えたお金を後から本人の財産で精算できる道が残されているわけです。ただし、申立ての代行費用は申立人負担のままで、本人の財産から精算することはできません。
後見人への報酬については、本人の財産から支払われます。家族が身銭を切って払い続けるものではありません。後見人は家庭裁判所に報酬付与の申立てを行い、認められた額を本人財産から受け取る仕組みになっています。逆にいえば、この手続きを経ずに後見人が勝手に本人のお金を報酬として引き出すことはできません。
では、本人にも家族にも支払う余裕がない場合はどうなるのでしょうか。そのために、費用の助成制度が各自治体に用意されています。成年後見制度利用支援事業として、申立費用や後見人報酬の全部または一部を助成する仕組みがあり、報酬については月額2万円程度を上限とする自治体が多く見られます。法テラスの立替制度を利用できる場合もあるでしょう。費用が理由で申立てをあきらめる前に、住んでいる自治体の窓口に相談する価値は十分にあるでしょう。
費用を抑えるために現実的にできること
ここまで費用の全体像を見てきましたが、実際に負担を軽くするために打てる手も整理しておきます。やみくもに安さだけを追うのではなく、要点を押さえた工夫が効きます。
申立ての一時費用を抑えたいなら、自分で手続きを進めるという選択があります。裁判所のWebサイトには申立書の書式や記載例が公開されており、書類の収集から提出までを自力で行えば、専門家への代行費用はかかりません。相続人が少なく、本人の状況もシンプルなケースなら、十分に検討の余地があるでしょう。
一方で、専門家への相談自体を惜しむのは得策とは限りません。着手前に相談しておくことで、鑑定が必要になりそうか、どの類型で申し立てるべきか、後見人候補者をどう立てるかといった見通しが立ち、結果的に手戻りやトラブルを防げるからです。特に、判断能力が低下する前であれば、任意後見や家族信託といった、成年後見以外の選択肢を含めて設計できる余地も生まれるでしょう。費用の話は、単体の金額よりも「どの制度をどう組み合わせるか」という全体設計の中で考えたほうが、納得のいく結論にたどり着きやすいものです。
制度の選び方や相談のタイミングについては、こちらの記事も参考になります。
成年後見の申立費用のご相談は国松司法書士法人へ
「うちのケースだと結局いくらかかるのか」「鑑定は必要になりそうか」「自分で申し立てるべきか専門家に任せるべきか」。成年後見の費用は、本人の財産状況や家族関係、申し立てる類型によって変わるため、一般的な相場だけでは判断がつきにくい面があります。だからこそ、着手前に具体的な見通しを立てておくことが、余計な出費や後悔を避ける近道になります。
国松司法書士法人は、相続・遺言・成年後見の相談と手続きに27年目、累計20,000件超の実績があります。司法書士・行政書士・土地家屋調査士のトリプルライセンスを持ち、成年後見の申立てはもちろん、任意後見や家族信託、不動産の絡む手続きまでを一貫して見渡したうえで、ご家族にとって費用面でも納得のいく進め方をご提案できる点が強みです。
初回相談は無料です。国分寺市・国立市・府中市・小平市・小金井市など多摩エリアの方はもちろん、全国からのご相談も歓迎しております。費用の見通しを立てたいという段階でも構いませんので、一度ご相談ください。
【この記事の監修:司法書士國松偉公子】
プロフィールはこちらに掲載されています。事務所概要 – 国松司法書士法人【国分寺駅南口2分】
この記事の監修者
国松司法書士法人(クニマツシホウショシホウジン)
行政書士国松偉公子事務所
オールフォーワン土地家屋調査士事務所
代表者
國松 偉公子(簡易裁判所代理権あり)
兵庫県神戸市生まれ。神戸高校、大阪大学卒業後上京。民間企業勤務を経て司法書士資格を取得。平成12年に東京都国分寺市内で司法書士国松偉公子事務所を開業。国分寺市を中心とした東京多摩地域で、開業当初から相続に力を入れ、遺言・成年後見・家族信託という相続周りの業務含め26年間で2万件を超える相談、手続実績を重ねた。その間、ワンストップサービス実現を目指し、行政書士資格、土地家屋調査士資格を取得し、事務所を併設、合わせて司法書士事務所を法人化。ハウスメーカー、金融機関、会計事務所、不動産会社等との強固な信頼関係を築きながら、エンドユーザーである個人顧客の遺言作成支援や家族信託の組成等の生前対策に力を入れている。共著に「相続手続きと生前対策ハンドブック」「相続の基本と最新対策がわかる本」(いずれも株式会社アックスコンサルティング 出版局)「地主のための相続対策」(幻冬舎)がある。
資格
司法書士(東京司法書士会所属)、土地家屋調査士(東京土地家屋調査士会所属)
行政書士(東京都行政書士会所属)、民事信託士(一般社団法人民事信託推進センター)
成年後見人名簿・成年後見監督人名簿登載(家庭裁判所)
相続アドバイザー(NPO法人相続アドバイザー協議会)
財産管理マスター(一般社団法人日本財産管理協会)
一般社団法人家族信託普及協会会員
国分寺市政治倫理審査会元委員
国分寺市財産価格審議会委員
- 初回のご相談は無料です
- 出張可(成約時は出張料無料)
- ご質問・ご相談お待ちしています。
- 042-300-0255
- いますぐ電話する
- お電話は[月-土]9:00〜18:00までの受付となります。
上記以外の時間帯は大変に申し訳ございませんが「ご相談フォーム」よりご連絡をお願い致します。 - ご相談フォーム
当事務所のサービス
国松司法書士法人では、行政書士・土地家屋調査士事務所を併設し、不動産登記・会社法人登記・許認可・相続・遺言・成年後見・家族信託などのお悩みにワンストップで寄り添います。
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- 不動産登記
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- 建設業許可・各種許認可
- 行政書士のライセンスもあり、建設業(入札参加資格申請含む)、宅建業、旅行業、産業廃棄物処理業等の許認可申請に対応しています。
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