【民法改正解説】認知症の方との取引や手続きが変わる!成年後見
2026年11月6日

【民法改正解説】認知症の方との取引や手続きが変わる!「特定補助」と「意思表示受領の特別代理人」を司法書士が分かりやすく解説
前回までに「スポット後見」つまり終われる成年後見になるということと、成年後見はオーダーメイド化されて本人の必要な範囲だけ個別に代理権や取消権を設定する『補助』の仕組みに一本化されるというお話をしましたが、今回はその『補助』を深掘りしたお話になります。
これらはすべて、令和10年後半あたりにスタートする予定です。
認知症などで判断能力が低下した方を支える「成年後見制度」ですが、実務の現場では「相手方に判断能力がなくて通知や契約解除の意思表示が届かない」「本人の意向を汲み取れないくらい重度の障害があるけれど、本人の意思を尊重しつつって、どういうことなのか」**という悩みが非常に多く寄せられ、私たち専門家も常に頭を悩ませます。
そこで今回は、新設された「特定補助」の仕組み** と、「意思表示の受領のための特別代理人」** について、具体的な例を交えながら専門家の視点で掘り下げて解説します!
認知症のご家族をお持ちの方だけでなく、不動産会社や金融機関の方、士業の先生方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
まず一つ目の**「特定補助」**について。
家庭裁判所は、補助開始の審判を受けた方が精神上の理由により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、かつ必要があると認めるときに、**「特定補助人」**を付ける旨の審判をすることができます。
この特定補助人は、主に次の3つの権限を持っています。
- 取消権の行使:一定の不利益な法律行為を取り消す権限。
- 意思表示の受領:本人に宛てられた法律上の通知や意思表示を代わりに受け取る権限。
- 財産の保存行為:財産の価値を維持するための保存行為を行う権限。
例えば、かなり認知症が進行している一人暮らしのAさんがいたとします。 Aさんが悪質な訪問販売で高額な契約を結んでしまった場合や、重要なお知らせ(契約更新や解除の通知など)が自宅に届いても理解できない状態のとき、特定補助人がいれば、その不利益な契約を取り消したり、Aさんに代わって重要な意思表示を受領したり することができます。
本人の自己決定や意思尊重に配慮しつつ、必要なサポートに絞って権限を与えることができる柔軟な仕組みとなっています。
続いて二つ目の「意思表示の受領の特別代理人」について。
前提として、意思表示の相手方が意思能力を有しない場合、原則としてその意思表示をもって相手方に対抗できない(=効力が生じない)とされています。
つまり、「契約を解除したい」「催告をしたい」と思っても、相手方が重度の認知症などで受領能力がない場合、通知が法的に有効に届かないという問題が発生します。
そこで意思表示の相手方が精神上の理由で事理弁識能力を欠く常況にあり、その人のために意思表示を受ける人がいないときは、表意者(通知を送りたい側)の請求により、家庭裁判所が「特別代理人」を選任できるようになりました。もちろん特定補助人が選任されていて、表意者の意思表示を知った場合は特別代理人の選任は必要ありません。
選任された特別代理人は、本人のためにその意思表示を受け取ることができます。
さらに、この特別代理人は必要があると認めるときは、本人の補助人又は特定補助人を選任してほしいと審判の請求を行うことも認められています。
例えば、アパートの賃貸人(大家さんである)Bさんが、賃借人Cさんに契約解除の通知を送りたい場面を考えてみましょう。 賃借人Cさんは重度の認知症で意思表示を理解できず、補助人や特定補助人もついていません。このままでは通知が届かず、賃貸借関係の清算や建物の明渡しが進められず、大家さんであるBさんは困り果ててしまいます。
そこでBさん(つまり意思表示の表意者)が家庭裁判所に申し立てて**「意思表示の受領のための特別代理人」**を選任してもらうことで、その特別代理人に対して有効に解除の意思表示を行うことができるようになります。
ここからは、日々成年後見実務を行っている司法書士としての**「掘り下げポイント」**を2つお伝えします。
ポイント①:権利保護と取引安全のベストバランス 従来は、相手方に認知症の疑いがある場合、本人の親族などが後見開始の申立をしてくれるのを待つか、表意者側が利害関係人として後見開始の申立てをするしかありませんでした。しかし、後見人選任には時間も費用もかかります。今回新設の「意思表示の受領のための特別代理人」は、特定の手続きや通知を成立させたい相手方である表意者からの請求で迅速に対応できるため、取引の安全と法的関係の早期確定に非常に役立ちます。
ポイント②:本人を権利擁護へとつなぐこと 特別代理人は単に通知を受け取って終わりではなく、必要に応じて補助開始の審判を請求する権限も与えられています。これによって、放置されがちな認知症高齢者を本格的な福祉・権利擁護のネットワークへつなぐ「架け橋」としての役割も期待されます。
いかがでしたでしょうか?
今回は、成年後見制度の改正ポイントとして「補助」の中にある「特定補助」 と「意思表示の受領の特別代理人」 について解説しました。
- 特定補助:本人に事理弁識能力がない常況にある場合でも、一定の法律行為を取り消したり・意思表示を受領したり・財産の保存行為ができるという限定的なサポートを行える制度。
- 意思表示の受領のための特別代理人:認知症などで受け取り能力がない相手方に対し、表意者からの請求で家庭裁判所が選任し、通知を有効に届ける制度。
難しそうに見える民法の規定ですが、背景にある「困っている人をどう救うか」「手続きをどうスムーズにするか」という意図を知ると、実務での活用法が見えてきます。
国松司法書士法人では、成年後見の申立てや不動産・終活・相続に関するご相談を承っています。概要欄にリンクを貼っていますので、お気軽にお問い合せください。
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それではまた次回の動画でお会いしましょう。
#民法改正 #成年後見 #後見人
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