不動産売買の立会その2
2012年4月28日
売買代金の受渡の形としては、振込、小切手、現金と3パターンがあります。ほとんどの場合は振込ですし、買主様が金融機関からの融資によって代金の精算をする場合は振込となることがほぼ確実です。
売主様に抵当権の抹消がある場合、その売買代金で残債を完済するということが多いので、その場合もほぼ振込となります。
数年前までは、振込の手続き自体が終わってしまえばその振込伝票の存在そのものをもってその取引は終了、全員解散できたのですが、最近では抵当権者(抹消銀行)が振込の着金確認までをとるケースが増えました。取引開始から約1時間くらいで以前は解散できたのに、それから着金確認までするとプラス1時間位解散まで待たなければならないことがあります。また、取引が集中するような月末、給料日などは、着金までにさらに時間のかかることもあり、そうすると取引開始から解散までに3時間位かかることもあります。司法書士としては、解散してから基本的には当日中に登記申請をしなければなりませんから、大変忙しい一日となるのです(抹消銀行が取引の場に来てくれない場合は、解散した後、抹消書類を司法書士が単独または売主様同行で受け取りに行き、そこで着金確認ができないと待たされることになります)。
そんなわけで、不動産売買というのは、司法書士にとってみれば、時間との戦いといえます。
解散するまで全員で待つ間の時間、「この長い待ち時間を有意義に使えないものですかねー」とか、「この待ち時間の間に、何か芸でもやってお客様によろこんでもらいましょうか?」などとおっしゃる仲介業者さんもいらっしゃいました。しかし、この待ち時間に自分の仕事を終えたら、取引している銀行のブースから外へ出て、一切おしゃべりをしない年配の仲介業者さんが昔いらしたことを思い出します。
その方には当時とてもご贔屓にしていただきましたが、あるとき、その仲介業者さんに「なぜ、売主様や買主様とお話をしないのですか?」と聞いてみたところ、帰ってきた答えはこうでした。「売主はもっと高く買ってほしかったのに値切られた・・・と思っていることでしょう。買主はもっと安く買いたかったのに高い買い物になってしまった・・・と思っていることでしょう。いくらニコニコしていても、心の奥底にはそんな利害の対立が有るに違いないと思うから、私は一切余計な話をしないんだ」
今思うに、その方はとても純粋な方なのだなと。
取引が終わり、解散する際に、仲介業者さんの中には、ある言葉を発する方がいらっしゃいます。
「おめでとうございました」
この言葉、何年たっても、なにか、その場に似つかわしくない、とってつけたような言葉のような気がします。
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